脂質異常症とは?遺伝するって本当?
厚生労働省の2017年の調査で、脂質異常症で通院している患者さんは全国で約220万人にのぼると発表されています。未受診の方も含めればその数はさらに多いことが予想されます。脂質異常症とはいったいどんな病気なのでしょうか?また遺伝するという話を聞いた方もいらっしゃるかと思いますが実際どうなのでしょうか?
血液中の脂質の量が異常な状態です
脂質異常症をひとことで表すとすれば「血液中の脂質の濃度が異常な状態」といえます。具体的には、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dl以上の「高LDLコレステロール血症」、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dl未満の「低HDLコレステロール血症」、トリグリセライド(中性脂肪)が150mg/dl以上の「高グリセライド血症」などが含まれます。以前は「高脂血症」とも呼ばれていましたが、現在は「脂質異常症」が正式な医学用語となっています。
原発性と続発性に分けられます
脂質異常症は、他の病気に伴わず起こる「原発性」のものと、他の病気(甲状腺機能低下症など)に伴って起こる「続発性」のものに分けられます。生活習慣が原因で起こるのは「原発性」の方ですので、今回はそちらについて解説していきます。
遺伝性のものも一部あります
「家族性高コレステロール血症」ということばを耳にしたことはありますか?この病気の方はは生まれつきLDLコレステロールが多く、若いころから血管の損傷(動脈硬化)が進み、心筋梗塞などになる危険が高くなります。軽症の方も含めると日本にが500人に1人以上いらっしゃるとされ、決して珍しくはない病気です。家族性コレステロールの患者さんに対するLDL-Cを下げる治療は、たびたび不十分であることが数多くの論文で報告されています。当院では患者さんごとに目標値の設定を正しく行い、将来の心筋梗塞などのリスクを抑えるのに必要な治療を決めていきます。
以下の①〜③が2つ以上当てはまる方はお早めの受診をお勧めします。
- 未治療のLDLコレステロールが180mg/dL以上である
- 皮膚や腱に黄色腫がある
- 家族(両親、祖父母、子供、叔父、叔母)で以下に当てはまる人がいる
- LDLコレステロールが180mg/dL以上
- 若年で冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)と診断されている(男性は55歳以下、女性は65歳以下)
脂質異常症になりやすい人はどんな人?
脂質異常症は一体どんな人がなりやすいのでしょうか?意外だと思われがちな項目もあるので是非チェックしてみてください。
肥満、喫煙、飲酒などがリスクになります
脂質異常症は生活習慣病のひとつですので、やはり普段の生活の積み重ねが病気につながります。具体的には肥満、喫煙、飲酒のほかにも、運動不足、ストレスなどもリスクを高めるようです。また、肥満の中でも特に中年以降の男性に多い「内臓脂肪型」の肥満は脂質異常症との関連が強いと言われています。
閉経後の女性は特に要注意です
なんとなく、肥満、喫煙、飲酒などと聞くと男性のほうが多い印象があるかと思いますが、実は全体で見ると脂質異常症の患者さんは女性が男性に比べて約2.5倍の人数がいます。これは閉経後、エストロゲンというホルモンが減少する影響で、急激にLDLコレステロールやトリグリセライドが増えることで脂質異常症になるためです。実際に年代別の患者さんの人数を見ると以下のようになっており、特に50代以降は女性の患者さんが急増しています。
脂質異常症になるとどんな症状が出るの?
脂質異常症では、症状は基本的にないことがほとんどです。これが怖いところで、ご本人が困っておられなくても、放置することで自覚のない間にどんどん血管の損傷、つまり動脈硬化が進み、心筋梗塞などのリスクが高まります。
MIZENクリニック豊洲では脂質異常症にどんな検査をするの?
脂質異常症の診断は血液検査によって行います。具体的には空腹時(前の食事から10時間以上あけた状態)の採血でLDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライドの血中濃度を測ります。当院では採血に慣れた医師、看護師が常駐しておりますので、ご安心してお越しください。
MIZENクリニック豊洲では脂質異常症にどんな治療をするの?
脂質異常症の診断されたらどんな治療が必要なのでしょうか。当院では、それぞれのライフスタイルに合わせた治療プランを立てられます。脂質異常症では継続的に通っていただき、経過を見ていくのが大切です。「駅近で、夜間診療を行っている通いやすい」と多くの患者さんが当院への通院を続けられています。
まずは生活習慣の改善に取り組みます
生活習慣の改善、具体的には禁煙、食事管理(飽和脂肪酸・コレステロール摂取の制限)、体重管理(BMI25以上であれば体重減少)運動量の増加(特に有酸素運動)、飲酒量の減少といったことに取り組んでいただきます。コレステロールの摂取に関して、厚生労働省のガイドラインでは、脂質異常症の重症化を防ぐためには1日200 mg以下にすべきであると推奨されています。生活習慣の見直しで数値の改善が見られれば、すぐにお薬を始める必要はなく経過観察ができます。
お薬が必要な場合もあります
上にも書きました通り、基本はまず生活習慣の改善ですが、医師の判断によっては早急にお薬を始める必要がある場合もあります。具体的には以下のような種類があります。
- HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)
- 陰イオン交換樹脂(レジン)
- 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)
- フィブラート系
- プロブコール
- ニコチン酸系
- エイコサペンタエン酸(EPA)
スタチンが第一選択薬、つまり一番初めに試すお薬です。それぞれの薬に特徴があり、例えば、トリグリセライドの低下にはフィブラートが効果的であることが知られています。当院では、医師が医学的知見に基づき、それぞれの患者さんに、LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライドのうちどれにどのくらいの強さの治療が必要かを判断し、適切なお薬を選択させていただきます。
脂質異常症を予防するには?
主には、脂質異常症になってしまった場合に行うような禁煙、食事管理、運動量の増加などの生活習慣の改善が有効です。
健康診断の結果を放置せず、まずは受診を
脂質異常症は未受診の患者さんも多く、悲しいことにその影響で心筋梗塞などを起こして亡くなってしまう方もいらっしゃいます。症状もないし、受診するのは面倒と思われるかもしれません。しかし今この瞬間にも血管が静かに傷つきはじめています。今の決断で未来を明るく変えましょう。是非一度当院への受診もご検討ください。
参考文献
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