うつ病で眠れなくなることはあるの?
うつ病の症状で一番に思いつくのはやはり「気分が落ち込む」「やる気が出ない」といったことだと思います。では、睡眠とはどんな関係があるのでしょうか?
うつ病患者の80%が不眠を経験している
うつ病と診断された方には不眠症状がかなり頻繁に出ることが分かっており、実に80%以上が悩まされているというデータもあります。
「過眠」といって寝過ぎてしまう症状も含めて、「睡眠が以前のように取れなくなった」という項目はうつ病の診断基準にも含まれるほど一般的な症状であり、これをきっかけに受診したらうつ病だった、というケースも多くあります。
うつ病で眠れない人の特徴
不眠は、大きく以下の4つに分類されます。
- 入眠障害:寝つきが浅い
- 中途覚醒:眠りが浅く途中で何度も目が覚めてしまう
- 早朝覚醒:早朝に目が覚めてしまいそれ以降眠れなくなる
- 熟眠障害:ある程度の時間寝ているのにも関わらずぐっすり寝たという感じが得られない
この中でも「入眠障害」がのうつ病の患者さんに一番起こりやすいという研究が発表されています。また「早朝覚醒」はうつ病に特徴的なので、もしこの症状が出た場合はうつ病の疑わしさが上がります。もちろん、そのほかのタイプの不眠を感じるうつ病患者さんも数多くいらっしゃいます。
※医学的にはうつ病に対して「入眠障害」は”感度”が高い、「早朝覚醒」は”特異度”が高い、と表現されます。
うつ病で眠れないときの対処法は?
ではここからは、よく眠れなくて困っているときにどうすれば良いのか、解決策についてお伝えしていきます。
考え方や生活習慣の改善
今まさに、ベッドの中でこの記事を読んでいる方は、一度諦めてベッドから出て本を読んだり好きなことをして過ごされるのをおすすめします。
このようにアドバイスした理由として、以下のようなことが不眠の治療に有効であることが示されているからです。
考え方編
- 睡眠時間にこだわらない
- 眠くないときに無理に寝ようとしない
生活習慣編
- できるだけ毎日同じ時間に起きる
- 運動を習慣づける(ベッドに入る4〜5時間前が理想的)
- 眠りやすい環境を整える(適切に空調を使い部屋を適温にする、寝具は自分にあったものを使う、遮光カーテンにし起きたら全開にする、など)
- 夕方以降のカフェイン摂取を控える
- 寝る前のスマホやパソコンの使用を控える
- 寝る前のお酒やタバコを控える
意外に思われるかもしれませんが、人によって適切な睡眠時間は異なるとされているため「絶対に7時間は寝ないと」「眠くないけどとにかくベッドに入って寝る努力をしよう」といった考え方は逆にご自身にストレスを与え、余計に眠りにくくしてしまうと考えられています。
眠れないということを意識しすぎず、上に書いたようなことを気をつけつつ、眠くなるまで気長にリラックスしてゆったりと過ごすのが良いようです。
深刻な場合は薬物治療や精神療法も活用
上記のようなことを試しても改善が難しい場合にはぜひ受診を検討してみてください。医師が睡眠薬などの処方を行ったり、精神療法という治療を受けることもできます。
睡眠薬以外にも、うつ病による不眠の場合には、抗うつ薬によって睡眠が改善することがあります。精神科の薬には抵抗感がある方も多いと思いますが、最近では副作用や依存の少ないお薬も増えていますので、医師にお薬の種類について相談してみても良いでしょう。
MIZENクリニックでもうつ病の不眠症状でお悩みの方のサポートができます。患者さんごとのご希望を伺い、医師が最適と判断した治療をご提案させていただきますのでご活用ください。
うつ病で眠れないことによる悪影響はあるの?
眠れなくて日中の活動に支障が出るならまだしも、なんともないんだったら放置してもいいのでは…とお考えの方もいらっしゃると思います。しかし睡眠障害は私たちの気づかないところで悪影響を及ぼしていそうです。
うつ病の病状は眠れないことで悪化する場合もある
一部の研究で睡眠時間の不足、質の低下そのものがうつ病の病状を悪化させる可能性があるということが発表されています。ご本人に自覚症状がなくても、負担がかかる状態になってしまう場合があると言えます。
眠れないことは身体の不調の原因にもなりうる
睡眠時間の不足や質の低下は、うつ病の病状以外に身体にも不調をきたす可能性があることが分かっています。例えば肥満、高血圧、糖尿病、認知機能低下などは睡眠障害がリスクの一つであると言われています。
うつ病で眠れない症状が辛い場合は受診を検討
上に書かせていただきました通り、MIZENクリニックでは不眠の相談を受け付けておりますのでお困りの際はご相談ください。
参考文献
- Ohayon MM, Roth T. Place of chronic insomnia in the course of depressive and anxiety disorders. J Psychiatr Res. 2003;37(1):9-15.
- Bonnet HM, Arand LD. Risk factors, comorbidities, and consequences of insomnia in adults. In: UpToDate, Benca R (Ed), UpToDate, Waltham, MA, 2020.
- Jonh WW. Overview of the treatment of insomnia in adults. In: UpToDate, Benca R (Ed), UpToDate, Waltham, MA, 2020.
- 日本うつ病学会治療ガイドライン
- 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット 不眠症
- 厚生労働省 みんなのメンタルヘルス 睡眠障害
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針検討会報告書
- 慶應義塾大学病院 医療情報健康サイトKOMPAS 睡眠障害
- 愛媛産業保健総合支援センター うつ病と不眠症の相関関係
- MSD製薬 うつ病と睡眠障害とは関係あるのですか?
- PHILIPS 睡眠不足が招くリスク
- National Heart, Lung and Blood Institution. Sleep Deprivation and Deficiency.