季節性うつ病とは?症状や治療法を徹底解説!

季節性うつ病とはどんな病気?

季節性うつ病とは、1984年に精神科医のローゼンタールらにより「冬季うつ病」として初めて報告された精神疾患で、秋から冬にかけてうつ症状が現れ、春先の3月ごろになるとよくなるというパターンを繰り返す(周期性)のが特徴です。病気の発症時期として季節性があるというのがポイントです。

春や梅雨、夏に起こるうつ病も存在する!

冬に繰り返す冬季うつ病がもっとも典型的ですが、冬以外の季節にだけうつ病が発生するパターンも多く存在します。これは冬以外でも毎年決まった季節に悲しみが増す傾向がある人がいるということです。

例えば、春は仕事や学校の変化など社会環境の変化が原因となりうつ病にかかる人が多くなります。梅雨にはは湿度が高まり不快感が増すこと、気圧の変化、雨による日照時間の低下などが原因でうつ病を発症してしまう人もいます。そして夏は強い日差しや暑さが直接的な原因となり、日焼けや冷房の当たりすぎ、睡眠リズムの崩れなどによってうつ病を発症しやすくなることが考えられます。

季節性うつ病は秋冬が一般的ではありますが、このように他の季節でもうつ病を発症しやすくなる原因は考えられるので、少しでも異変を感じたら、クリニックにご相談ください。

季節性うつ病に罹りやすい人

他の型のうつ病と同様、季節性うつ病は妊娠可能な年齢の女性に最も多く見られます。女性の方が男性より約3倍罹りやすいといわれています。

また、病態に日照が関わるため、赤道近くに住む人が罹ることは少なく、赤道から離れるほど患うリスクは高まります。英国では100人に3人が深刻な季節性うつ病に悩まされています。

季節性うつ病の原因

季節性うつ病は、冬場の日照時間不足が原因であると考えられています。特に、現代の生活では屋内で過ごすことが多く、日光に当たる時間が少なくなっています。

光が不足すると脳内でセロトニンの分泌が減り、そのためにやる気がなくなるなどの症状が見られ、うつ病になりやすくなると考えられています。

季節性うつ病の症状とは?

季節性うつ病では、①過眠、②過食、③体重増加といった典型的なうつ病とは異なる症状が多く、精神面でも「意欲低下や思考が進まない」「倦怠感がある」などの抑制症状の方が、憂うつ感などの抑うつ症状よりも目立つことがあります。

睡眠時間の増加については夜の睡眠時間の延長と日中の眠気の増加が同時に起こること、食欲亢進については炭水化物に対して特徴的で、白米やパン、パスタの他にチョコレートなどの菓子類を好み、午後から夜にかけて増強するといわれます。そのため、季節性うつ病はまるで冬眠している様子にも似ていると表現されることがあります。

少ないですが夏季に抑うつエピソードを反復するタイプの症例もあります。しかし、その症状は食欲減退や抑うつ気分が多く、通常のうつ病の症状に近いようです。

季節性うつ病のような気分や、睡眠・食欲などの生理機能の季節変動は一般人口においてもみられ、冬季に気分が低下することも確認されています。このような気分や生理機能の季節性変化が文化や民族を越えて存在することには、何らかの生物学的基盤が背景にあると考えられています。

季節性うつ病の治療法とは?

季節性うつ病(冬季うつ病)には他のうつ病とは異なり“日照時間不足”という要因が判明しているため、季節性うつ病特有の治療法も存在します。

光療法

ライトボックス(人工光)を使用して、冬季の日照不足をを補う方法です。これは1~2時間程度、2,500~10,000ルクスの高照度の光を照射するというものです。照射される光は太陽光に似ていますが、紫外線は出ないので肌や目に害がありません。

①照度が高ければ1回の照射時間を短くしても効果がある、②照度と抗うつ効果には正の相関がある、ことが確認されています。治療の効果は比較的早く認められることもあり、この療法が有効である場合は、多くの人が最初の1週間で症状の改善を実感します。

中断すると再発する可能性が高いので、冬季の間は連日行なうほうがよいとされます。光療法の副作用として、人によって頭痛や吐き気、目のかすみなどの症状が出ますが、ライトボックスからの距離を長めにすることで、これらの症状は軽くなります。

また、光目覚まし時計も治療に使われます。起床時刻の約1時間前にライトがほんのり点灯し、それが徐々に明るくなっていき、人工的に夜明けのような状態を作ります。起きるのがつらい冬の朝に特に効果があります。

その他、デスクワークをする人のための卓上ライトスタンドや野球帽のような形をしていて、つばの裏についた小さなライトで目に光を照射するライトバイザーなどがあります。患者さん一人一人に合った方法で日照不足を補うことで治療を試みます。

薬物療法

季節性うつ病の治療には一般的に抗うつ薬が有効です。疲労感や眠気が増す薬は避けるべきなので、このような副作用の少ないSSRIという種類の抗うつ薬が主に使われています。季節性うつ病の場合、秋に抗うつ薬を飲み始め、春になったらやめるのが一般的です。

認知行動療法

季節性うつ病の治療と再発防止には、認知行動療法が効果的であるとする研究結果もあります。認知行動療法とは、自分自身の行動や考え方の偏りをなくして、社会性を身につけていくための訓練の方法です。グループで実践されることや個人で行われることもあります。症状の改善を目指して、医師とともに取り組んで行きます。

季節性うつ病の予防法とは?

絶対的な予防法はありませんが、効果的な治療法が確定した後は好発時期に患者さん本人および家族による密な状態観察や予防目的に通院することで、効果的な予防治療や初期治療が可能になります。

太陽の光を浴びる

日照時間の短い時期にはできるだけ屋外に出て、日光に当たりましょう。先にも述べたように季節性うつ病の原因は日照不足と考えられています。特に冬には会社や家など室内にいる時間が長いとほとんど日に当たらなくなってしまうので意識的に外に出て太陽の光を浴びることは効果的です。

また、午前中に起床してすぐ自然の光に当たることが難しい場合は、自宅や仕事場の照明を明るいものに取り替えることも予防策となります。

バランスの良い食事をとる

脳内物質であるセロトニンが不足すると、うつ症状を引き起こすと考えられています。

炭水化物摂取による血糖値の上昇やインスリン分泌促進は、必須アミノ酸の一種であるトリプトファンの脳内への取り込み増大とセロトニン濃度の上昇を引き起こすので、過食はセロトニン神経機構の低下を補償するという仮説に沿っています。

自己治療として考えることもできるため、無理に抑制して自己嫌悪感を持つのではなく、治療経過の中で軽快することを覚えておきましょう。

周りの環境を整える

落ち込んだ気持ちを一人で抱えていると余計に悪化してしまいます。辛い気持ちは溜め込まずに、誰かに話してみるようにしましょう。そこで、周りに気持ちを話せる人を見つけることが大切です。家族や友人に相談して、理解と協力を得るようにしましょう。

季節性うつ病を早期発見するには?

日照不足が考えられる時期に発症があり、過眠や過食などの非定型症状が特徴の季節性うつ病ですが、アメリカの精神医学的診断基準であるDSM-5では、双極性障害および大うつ病性障害の中で季節型として取り上げられています。

そこでは、「冬季に限定した抑うつエピソードが最近2年間連続していること、過去の冬季の抑うつエピソード数が非季節性エピソード数を十分上回っていること」が最低基準とされています。

病相に季節性があることで悪化時期を予測でき、予防もしくは早期対処が可能なのは治療上の利点です。晩夏から秋口にかけて眠気や過食などの兆候をキャッチすることで早期治療が可能となるため、この病気に対する正しい認識と治療の必要性を知ることが大事です。

そのために、気分・睡眠・食欲に関する記録表を作成し、毎年8月以降は週単位で記録をとり、見える化を図りましょう。病相期の見える化により、早期の気づきが可能になると思います。

うつ病かも?と思ったらMIZENのクリニックへ

このように季節が原因でうつ病を発症することがあります。うつ病の中でも季節性うつ病は原因がわかっており、適切に治療することで改善しますので、少しでも心配なことを感じたら、お気軽にご相談ください。

精神的な症状で困っている方のために、MIZENクリニックではオンライン診療も行っています。LINEを使ってご自宅から医師に相談可能なので、メンタルのことでお困りの際はご活用ください。

なお、当院にはじめての受診の方は、お薬の処方はオンライン受診のみでは行えませんので、初回からお薬の相談もご希望の方はホームページからご予約の上、ご来院ください。

参考文献

>夜間内科 「MIZENクリニック」

夜間内科 「MIZENクリニック」

「MIZENクリニック」は、『働く人のための夜間診療内科』をコンセプトに、平日の夜17時30分から21時30分まで診察しております。 多様な専門性と診療方針の医師が、風邪などの日常病や、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病をはじめ、喘息、風邪、不眠、メンタルヘルスなどお困りごとに対して幅広くご対応させて頂きます。

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