まだ昼なのに眠い、朝起きられない、いつも居眠りをしてしまうといった悩みを抱えている人は実は多いのではないでしょうか。このような症状の裏には病気が潜んでいるかもしれません。この記事では、「過眠」とうつ病の関係性について解説していきます。
過眠の症状と原因とは
まずは過眠とは何か、そしてなぜ起こるのかについて解説します。
①過眠とは何か
過眠とは夜に十分な睡眠をとっているにも関わらず、昼に目覚めていられない、居眠りしてしまうといったような、病的な眠気がみられることです。健康な人は日中眠くなっても意思の力で目覚めていられますが、いくら頑張っても寝てしまう場合は病的な眠気であると考えられます。
②過眠の原因
過眠の原因として考えられることはいくつかあります。
・睡眠不足症候群
長期間にわたって睡眠が不足している場合にも、過眠症状がみられます。体を休ませるのに必要な睡眠時間には個人差があり、自分では十分な時間寝ているつもりでも、体としてはもっと睡眠時間が必要だった可能性があります。十分な睡眠を確保すると自然に眠気がとれます。
・睡眠の質が低い
寝る前にスマートフォンの光を浴びて脳が覚醒している、寝る前にカフェインを摂取している、寝具が合っていないなどの理由により、一見睡眠時間は確保できていても、質の高い睡眠が取れていないことがあります。
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)
この病気では、睡眠中に喉元の空気の通り道が狭くなり、短時間の呼吸停止が繰り返し起きます。すると身体が酸欠状態になるため、深い睡眠をとることができなくなり、昼間の眠気が生じます。この病気では心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなったり、糖尿病が悪化したりする原因になるので早期治療が大切です。
・その他の脳や神経系の病気
睡眠を調節する脳のある部位の異常によって睡眠・起床そのものが上手くできなくなります。特殊な病気なので専門機関で診察を受ける必要があります。
・うつ病
うつ病については次の章で詳しく解説していきます。
うつ病とは
うつ病は、ストレスなど様々な原因により生じる、心と体の両方の症状からなる病気です。約16⼈に1人は、一生のうちに一度はうつ病にかかるといわれており、決してまれな病気ではありません。うつ病の症状には心に現れる症状と体に現れる症状があります。
「心の症状」
・やる気が出ない、趣味を楽しめない、仕事や家事に集中できない、人と会いたくない、人と話をすることがつらい、出かけたくない
・些細なことで思い悩みすぎてしまう、死や自殺について考える
・イライラする、逆に感情が湧いてこない
「体の症状」
・不眠、過眠などの睡眠障害
・食欲がない、吐き気がする、食べすぎる、味覚が変わった
・体がだるい、疲れやすい
・めまい、耳鳴り、頭痛、肩こり、体が痛む、息苦しい、胸がドキドキする、手足のしびれ
などがあり、これら以外にも様々な症状が現れます。過眠以外にもこれらの症状で当てはまるものが多いと感じたら、一度専門の医師に相談してみましょう。MIZENクリニックではメンタルヘルスなどのお困りごとにも対応しておりますので、ぜひ受診をご検討ください。
うつ病と過眠の関係とは
うつ病と過眠の関係は2つに分けられます。
①うつ病で過眠症状が出る場合
うつ病の方は慢性的にストレスを抱えている事が多く、これにより十分な睡眠がとれなかったり、疲れが出たりすることでより睡眠を体が欲するような状態になったりします。最近の研究ではうつ病に関連するセロトニンという物質の働きを制御する脳の領域は動物が不快感を覚えると活性化され、レム睡眠と呼ばれる浅い眠りを維持しようとすることが分かっています。眠りが浅いと長時間眠っていても十分に体が回復せず、日中の眠気がおさまらなくなります。
また、ストレスを受けると無意識のうちに現実逃避しようとして、これが睡眠という行動となって現れることもあります。睡眠は心身の疲労を回復させるので、うつ病によって過眠症状が出ることはある意味では必要なことだと言えますが、その過眠症状がストレスになることもあります。
②うつ病の治療薬で過眠症状が出る場合
うつ病の不安や緊張などの症状を抑えるために使用される抗うつ薬は副作用として眠気が現れることがあります。また、うつ病の不眠症状を改善させるために睡眠薬を用いていることがあります。
このようにうつ病の治療薬が過眠の原因になることがありますが、自分で判断はせず、主治医と相談しながら対応しましょう。
自己診断には限界があるので専門家の診断を受けよう
ここまで過眠について、また過眠とうつ病の関係性について解説してきましたが、やはり自己判断には限界があります。適切な治療を受けて快適な生活を取り戻せるよう、まずは専門の医師に相談してみましょう。MIZENクリニックではメンタルヘルスなどのお困りごとにも対応しておりますので、ぜひ受診をご検討ください。
参考文献
1.厚生労働省e-ヘルスネット https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-010.html
2.国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研部 中枢性過眠症 https://www.ncnp.go.jp/nimh/sleep/sleep-medicine/hypersomnia/index.html
3.厚生労働省e-ヘルスネット https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-002.html
4.厚生労働省e-ヘルスネット https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-07-004.html
5.http://うつ病関連物質セロトニンを制御する外側手綱核は睡眠調節も担う | 理化学研究所 (riken.jp)
6.Hidenori Aizawa, Shin Yanagihara, Megumi Kobayashi, Kazue Niisato, Takashi Takekawa, Rie Harukuni, Thomas J. McHugh, Tomoki Fukai, Yoshikazu Isomura, Hitoshi Okamoto. “The synchronous activity of lateral habenular neurons is essential for regulating hippocampal theta oscillation”. Journal of Neuroscience, 2013