長期自粛による食生活の変化や運動の減少といった生活習慣の悪化、およびストレスは様々な疾患の基となり、脳卒中もその1つです。感染流行は未だ予断を許さず、長期的に見て脳卒中患者が増加する事が懸念されます。
ここではまず脳卒中と新型コロナウイルスの関係を知り、どう予防していくかを述べていきます。
脳卒中とリスク因子
まずは脳卒中そのものについて解説します。
脳卒中は大きく3つに分類され、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の内部で出血する「脳出血」、脳を包んでいるくも膜の下で出血が起こる「くも膜下出血」があります。高血圧や不整脈、糖尿病や肥満、喫煙などが要因に挙げられ、これらにより血管が硬くなり、詰まったり脆くなったりする事で脳卒中を引き起こします。
いかに早く処置ができるかが生存率や後遺症の程度を左右します。自粛中の生活習慣の悪化は血管の状態を悪化させ、自粛ムードが解除されてもすぐ元通りになるものではありません。そのため、自粛期間の予防が大事になっていきます。
新型コロナウイルス流行下での脳卒中
ここからは、感染者と非感染者にわけてそれぞれ解説していきます。
感染者における脳卒中のリスク
脳卒中は生活習慣と密接に関係しますが、新型コロナウイルスとの関係性も次第に明らかになってきています。新型コロナウイルスは高年齢、高血圧、糖尿病、腎臓病、循環器疾患、肺疾患といった持病に加えて喫煙といった要因を持つ患者が重症化しやすいとされています。
一部の持病は脳卒中のリスク因子でもあり、脳卒中の予防が新型コロナウイルス感染症の重症化リスクも下げると言えます。
また、新型コロナウイルス感染者が脳卒中を発症する例も報告されています。感染者の血中成分が固まり、血栓を形成する事で血管を詰まらせていると考えられており、特に普段は脳卒中を発症しにくい30〜40代の間でも発生する事が伝えられています。
非感染者の脳卒中治療への影響
ここまでは脳卒中と新型コロナウイルスへの感染との関係について述べてきましたが、新型コロナウイルスの社会的な影響は非感染者にも広がっています。脳卒中を発症した場合場合、病院側では新型コロナウイルスの感染拡大防止のために受け入れ制限や遅れが発生する可能性があります。
また、患者さん自身も病院に行くことで新型コロナウイルスに感染してしまう事を恐れた結果、手遅れになってしまう可能性もあります。そのような事態を避けるために、正しい予防法と対処法を知る事が大切です。
長期自粛下で可能な予防策
ここまで新型コロナウイルスの流行と脳卒中の関係を述べていきましたが、言い換えれば正しく予防する事で脳卒中の発症リスクを下げる事ができるとも言えます。それでは、どのように対応していくかを見ていきましょう。
普段の生活で気をつける事
まずは生活習慣の改善が重要です。自粛中は運動量が減ったり、間食などで食べ過ぎる傾向が強くなるので、通常の食生活以上に塩分、総カロリーに注意する必要があります。屋内での運動は勿論、接触に注意した上でのランニング等の屋外運動も認められています。
ランニング、ジョギングといった有酸素運動の目安は、自分が少し辛いと思う程度のスピードで30分程度運動することをできれば毎日続けることがよいとされています。
薬の継続の重要性
既に持病を抱える方や脳卒中後で治療中の方が服薬を継続する事が重要です。ネットでは幾つかの薬剤が新型コロナウイルスへの感染リスクを上昇させるといった内容が散見されますが、これに関しては未だ研究では解明されておらず、一般的には投薬を継続するべきだという見方がなされています。
現在ではオンライン診療を使って自宅にいながら薬を継続することもできるので、感染を避けた上で服薬を継続することもできます。リハビリも同様で、自宅でできる事を継続する事が重要になります。
脳卒中について、こんな症状を疑ったら?
万が一発症してしまった時にどう対応すべきかを知る事は予防と同じくらい重要です。
脳卒中の症状は脳内で発生した部位に関連し、突然現れることが多いです。具体的な症状としては頭痛や目眩、片側の顔や手足が動かなくなったり痺れたり、呂律が回らない事や上手く喋れない事などが挙げられます。
特にくも膜下出血では今まで体験したことのない激しい頭痛が起こります。脳卒中の治療は一刻を争うので、新型コロナウイルスへの感染リスクを心配したとしても早急に救急車を呼ぶ事が重要です。
また、脳卒中に似た症状が一時的に現れてもすぐに消える場合がありますが、これは脳梗塞の前触れである「一過性脳虚血発作」である可能性があります。注意していただきたい事は、
この発作の後に再発して脳梗塞に進展する場合がある事です(90日以内15〜20%、そのうち半数が48時間以内に発症)。こちらも同様に早く治療を開始すれば生存率が高まり、後遺症の軽減に繋がります。
症状が消えたからといって治ったとは限らないので、上記のような異常を感じたら早急に病院にかかる事をお勧めします。